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  • 開発者インタビュー

Bubble90が誕生するまで

Bubble90誕生のきっかけは、東大阪市の金属加工工場に持ち込まれたひとつの節水製品にはじまります。「これを同じものを作って欲しい」という声に、開発者である高野は「いいですよ」と二つ返事で引き受け、何気なく聞いたその市場価格に驚きました。

「この程度の製品がそんな高価に売られているなんて!」 「ウチで作るなら、もっといいモノが作れるのに!」

ここから、高野は「Bubble90」という画期的な製品を生み出すことになります。まだこのころはBubble90という名前もなければ、節水蛇口という手法も頭にはありませんでした。現在の完成されたBubble90の形や構造にたどり着くまで、まるで製品に導かれるように一つの道を歩み始めるのです。

世の中のニーズを知る

最初に持ち込まれた節水製品とその市販価格に驚いた高野は、まず、世の中にどういったニーズや製品があるのか調査を開始。水に関するニーズが多いことはわかったものの、水に関しては素人である自分にとって効果がよくわからない商品……悪くいえば「うさんくさい」商品が多く目につきました。また、金属加工の技術力には絶対の自信があったので、自然とそれを活用した製品を考え、その思いを具体化できる道を模索し始めます。

製品比較と特許の読み込み

それからというもの、高野はさまざまな他社の節水製品の構造や機能、性能を、実際に製品を手にとりながら比較しました。同時に、節水に関する特許を読み込む必要もありました。せっかくよい製品を作ることができても、知らず知らずのうちにすでにある特許を侵害するようなことがあってはならないからです。ほぼ3ヶ月は特許資料の読み込みに時間を費やしました。実はこの期間に学んだことが、Bubble90の独創性の底力となっているのです。

節水に関する特許は数多く申請されています。蓄積された特許を十数年前にまでさかのぼり、つぶさに読み込むと、実現が困難な例や、実用化されなかった例などを多く確認することができました。また、同時にこれらの網の目のように張り巡らされた既存の権利をいかに侵害せず、まったく新しいモノを作るかということを高野は考え始めます。そして、今までにない形の節水蛇口をひとつの軸として据えて開発に入ったのです。

プロジェクトチーム「デザイナーズギルド」設立

2008年2月

高野は製品づくりのためにプロジェクトチームを起ち上げます。水に関してはまったくの素人でしたが、金属加工の技術では大阪でも名前が知られていたため「高野さんが作るなら、いいものができるだろう」という期待の声もあり、水関連企業の協力を得ることができました。素人なりにわからないことを尋ねると、すぐ答えてもらえる環境が整ったのです。

その環境の効果もあり、徐々に「節水蛇口」という形を具体化して考えるようになります。情報収集や検証など、それぞれのエキスパートが役割を担ってくれたおかげで、毎月の会議ごとに、出てくる課題をクリアできるようになっていました。

2008年8月 試作品第一作目

試作品第一作目がなんとか形になります。実は、このときすでに84%の節水率がありました。しかし問題は、それほど高い洗浄力がなかったこと。決して低くはないが、突出して高いというものではありませんでした。

このころ一番追い求めていたのは節水効果「だけ」だったからです。効果を出せる条件が揃ってから、外観を整えるべきだと考えていたのです。

二作目は一作目と比べても、より現在のものに近くなっています。また、節水率の向上(このとき節水率87%)とともに、課題であった洗浄力も実用に近づけることができました。小型化にも成功。一作目は1本の水の柱だったものが、二作目は三本の水の柱へと改良されています。

小学校プールでの試練

2008年11月

二作目の試作品を、ある小学校でサンプルテストさせてもらうことになりました。設置場所はプールの手洗い場の水栓。持参したサンプルをつけてみると、水がまったく出ないのです。試しに隣の蛇口をひねると、サビで真っ赤になった水が流れます。試作品は完全に詰まリ、外してみると、完全に壊れてしまっていました。

問題の要因として、まず水道管が古かったこと、プールの手洗い場であった為、夏以降使用していない水栓であったことがあります。こういう問題を考えていなかった為、試作品はまったく役に立たないものとなってしまいました。校舎内の水栓でもテストを使用とした時、あることに気付きました。蛇口のキャップが全て取り外されていたのです。この地域は硬度の高い水質であった為、キャップは全て使えなくなっていたからです。一作目、二作目まではトントン拍子に進んでいただけに、大きな試練が与えられました。ここで高野は考えます。

「どんな水質のところでも使ってもらえる、詰まらない製品を作らなければ」

あるところでは使えるが、別のところでは使えない、そんな製品では世に送り出すことはできません。詰まる原因として考えられることは、まず硬水。カルシウムやマグネシウムといったミネラル分を多く含む水の地域では、泡沫栓が外されていることがよくあります。内部の網の部分にミネラルが付着し、ふさがってしまうためです。さらに、物理的にサビや小さな小石などが流れて目詰まりするといったこともあります。そのため、メンテナンス方法についても考えなくてはいけませんでした。

2ヶ月間考え抜いて

それからの時間が大変でした。従来の節水ノズルや蛇口の形状に多い網タイプもシャワータイプも、いずれは詰まってしまいます。まったく別の方法論を見つけ出すまで、ほぼ2ヶ月、考えることだけに時間が費やされました。一日中、生活の中で常に「詰まらない方法」を考え続けました。

ひらめくのは早朝。布団から出るまで1時間はひたすら考え、思いついたことは忘れてしまわないよう、すべてノートに書き出しました。そうやってたまったアイデアを基に、今度は現実的に開発できるものを選び出します。製品開発にはどうしても時間がかかるため、間違ったルートを選んでやり直しを繰り返すような無駄なことはしたくないからです。それまでに触れた製品や特許資料で得た知識、プロジェクトチームで得た情報などから、さまざまな場面を想定しひとつひとつの案を消去。最終的に、ひとつのルートが残りました。

第一の転機~海外で得た手応え~

2009年1月

これならいけるかもしれないという試作品ができた頃です、協力してもらっていた方から「世界最大規模の水の見本市が3月にあるから出展してみないか」と声をかけられました。その時点で87%の節水率。これだけでもかなりいい数字です。国際的にニーズがあるか見てくるためにも、すぐに「行きます」と返事をしました。こうして、メッセベルリン2009「水」専門見本市への出展が決まったのです。

しかし、実はこのとき、肝心の完成品はまだできていなかったのです。2ヶ月あれば完成するだろうとの見切り発車。実現化するルートだけは定まっていたので、必死に作り続けることになります。

2009年3月

ベルリンヘ出発する当日の早朝4時。数時間後には空港へ向かわなければなりません。3月のまだ寒い明け方、震えながら水を出してテストを繰り返し、やっと「これだ!」というものができあがりました。現在のBubble90の原型です。ほとんど寝ないまま、やっとできた数個を持って飛行機に搭乗。しかし、展示に必要なパネルや配布するパンフレットは何もない状態です。飛行機の中で十数時間、必死にパソコンで作成し、現地で印刷しました。

そんな急ごしらえの即席ブースに、多くの方が興味を持って集まってくれました。来場していたほとんどのヨーロッパと中東の方には観ていただけたと思います。日本製という信頼もあり、評判は上々。質問攻めにあったり、その場で譲ってくれと交渉されたりといったことも。すべてが初めての体験でしたが、世界中のニーズを強く感じた瞬間でした。

第二の転機~日本国内での評価~

2010年5月

ベルリンで感じた世界の大きなニーズから、よりしっかりした製品にしたいと、改良を続けます。製造も短時間でできるようになり、量産化を実現。この時点で試作品としては17作目。現在のBubble90と、ほぼ同じかたちのものができるようになっていました。試行錯誤は続けていましたが、ほぼ完成形といえる状態です。

そんな折に知ったのが、「"超"モノづくり部品大賞」。日本の製造業に光をあてたトップクラスの賞です。モノ(製品力)で勝負するこの審査は、応募に企業規模は問われません。世界に名だたる日本の製品はモノである部品によって支えられています。そこへスポットをあてようというのがコンセプトです。

すでに製品の節水率は世界トップを確信していました。条件は揃っていました。必要な専門家の推薦状や、検証してもらった最高のデータもありました。しかし、応募しているのは日本を代表するような、誰でも名前を知っている大企業ばかりです。敢闘賞くらい取れればいいなといった気持ちで応募することになりました。

2010年10月 "超"モノづくり部品大賞グランプリ受賞

応募から5ヶ月後。突然、電話でグランプリ受賞を伝えられました。ベンチャー企業で初のグランプリ受賞! 驚きのあまり、実感がないというのが正直なところでした。応募しているのも忘れていた頃で、まさかといった感じです。それより、受賞と同時に依頼されたスピーチのほうが気になるばかり。グランプリを受賞者は、表彰会でスピーチをしなくてはならないのです。今度はほぼ1ヶ月、仕事にならないほどスピーチの内容を考えていました。結局、緊張の中、当日の朝、会場入りの3時間前にようやく集中してスピーチ原稿を書き上げました。

表彰会場に到着し、エレベーターを降りると、カメラフラッシュの嵐。立て続けの取材で、頭が真っ白になるほどでした。グランプリ受賞者の席は会場の一番前の真ん中。周囲は堂々たる企業の社長・重役クラスが並んでいます。当時31歳。どうやって壇上に上がり、スピーチをして戻ってきたのか覚えていません。ただ、ものすごい拍手だけはしっかりと覚えています。 ≫"超"モノづくり部品大賞 グランプリ製品の内容について

2010年10月・株式会社DG TAKANO設立

"超"モノづくり部品大賞グランプリ受賞から、Bubble90は注目を浴び始めます。問い合わせに追われ、やっと、Bubble90を世に送り出すためには組織が必要であることに気づきます。モノを作ることしか念頭になかったため、組織づくりというものに考えが及ばなかったのです。日本一になってようやく、株式会社DG TAKANOは会社としてのかたちを整えることとなりました。

世界への飛躍を目指して

Bubble90は各国の展示会・見本市へ積極的に出展しています。2009年12月パリ展示会Pollutec、同12月 東京ビッグサイト「エコプロダクツ2009」、2010年ドイツ ミュンヘン国際見本市「IFAT ENTSORGA 2010」など。どんな水質・水圧でも対応できるBubble90だからこそ、自信を持って世界へ紹介できるのです。

また、さまざまなメディアにも取り上げられたことから、Bubble90が世界で求められている製品であることを再確認しています。今後も新しい製品作りや改良を進め、人々の生活に貢献できる製品を世に送り出す企業でありたいと考えています。

開発者インタビュー

Bubble90のような節水製品を作ろうと思ったきっかけを教えてください

本当に節水効果の高いモノを作ってやろう!という気持ち

制作ストーリーにもあるように、持ち込まれた他社さんの節水製品を見たことからスタートしています。「同じものをつくって欲しい」と言われて、うちなら数百円で作れるような製品が、何十倍もの値段で売られていたんですね。それで、水業界ってどうなってるんだ?と思ったことがきっかけになっています。

モノづくりに携わる身とすれば、よい商品を適正価格で売りたいと思うじゃないですか。それでいろいろ調べ始めたんですが、効果がわかりにくいもの、効果に疑問を感じるものが多かった。それなら自分で本当に節水効果の高いモノを作ってやろう!という気持ちになったんです。

"超"モノづくり部品大賞 グランプリ受賞の理由はどこにあったと思いますか?

あきらめずに開発を続けたことと、事前にしっかり学んだこと

やはり「どんな水圧・水質でも使える」をあきらめずに開発を続けたことにあると思います。使ってもらえないモノを作っても仕方ありませんから。でも「どこでも」の範囲が日本だけでなく、世界にまで及ぶとは自分でも考えていませんでした。理想を追求した結果として、こういったかたち、人にも評価していただける製品になったのだと思っています。

それから、独創性という点では、これまでの節水に関する特許資料を素人ながら読み漁ったことが大きな力になったと思います。今までに誰も考えなかったモノを作ろうという姿勢だったので、結果としてどこにもないモノが生まれたのではないかと思っています。

なぜこのような仕事を成し遂げられたのだと感じますか?

人と人とのつながりがあってこそだと実感

私はIT企業に勤めていた経験があるのですが、学生時代から「いつか独立してやろう」という気持ちでいました。これからは何をするにもITの力が必要だと考えてのことです。しかし、実際に独立してみて、やはり人の力、人とのつながりがあってこそ大きな仕事がやり遂げられるのだと実感しています。

まずは、職人である父、そして父の技術力を高く評価し、私を信頼してくださったデザイナーズギルドの皆さん、それから、さまざまな助言をくださる方々、現在もお世話になっている先輩方、あげていくときりがありませんが、本当に多くの人の力があってここまで来られました。もし、自分ひとりとITだけだったなら、ここまでできなかったと感じています。

これからの展望をお聞かせください。

世界中のお客様にBubble90を使っていただけるようにしたいと考えています

現在、Bubble90は業務用のみの対応となっていますが、家庭のシステムキッチンの蛇口にも対応した製品にしたいと考えています。実現に向けて開発中ですので、ぜひ楽しみにお待ちください。その次は、Bubbleシリーズのシャワーヘッド。Bubble90ではシャワータイプは採用しませんでしたから、これは挑戦しがいがあると思っています。大企業でのコラボ製品もぞくぞく登場する予定です。

それから、当社で作っているBubble90シリーズを直接、一人ひとりのお客様にお届けしたいとも思っています。今は厨房用限定ではありますが、通信販売やサンプルでお試しもできる体制になっています。いずれ一般家庭に向けても、Bubble90をお届けしたいですね。製造元から直接販売することで、値段が高くなることも防げます。

会社としてはまだまだ若いですから、組織として磐石なものにしたいと考えています。ベンチャー企業ですので、これまで開発だけでなく製造、量産、管理、営業、事務、すべて一人でやってきました。どんなにいいモノが作れたとしても、会社としての仕組みがきちんとしていないと広く世に送り出せません。そこがベンチャー企業の弱点です。当社の強みは技術力、加工力、そしてアイデア。これらを最大限に活かしたモノづくりをして、きちんと送り出せる仕組みを整え、世界中のお客様にBubble90を使っていただけるようにしたいと考えています。

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